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GSのCDO取引のスキームについて(update)

FTの記事"Goldman Versus the regulation"を読んで、なんとなく今回のAbacusのスキームが分かったのでメモ替わりに書いていきます。他参考にしたのはGSの公式プレス(日本語)、WSJ【社説】米SEC対ゴールドマンAbacusピッチブック、ZeroHedgeのGuest Post: Is Abacus 2007-AC1 Unique?SECのcomplaintsです。

#4/20 complaintsに記載されている内容を反映。

組成までの経緯

・2006年に、ポールソンがGSを訪れ、RMBSのCDSでショートポジション作りたいんだけど誰がロングする奴いないか?とCDOの提案をGSに行ったのが本取引の始まり。

・2007年1月、ポールソンがサブプライムRMBS123個をGSに提示。これらは直前に価格が急騰したCA,NV,FL,AZ州のものが中心。FICOのスコアが低く、ARMの比率が高いもの、つまり危ないものばかり。ポールソンは、住宅価格下落を見込んでショートポジション(=CDS買い)をGSに対して組みたかった。

・GSは、ポールソンがポートフォリオの設定に関与しつつショートポジションを取ると分かると誰も買わなくなるので、選定に第三者を挟めばよいと考え、コラテラルマネージャーにRMBSのリスク評価の経験があるACAを入れた。尚、SECの報告書には、IKBがコラテラルマネージャを要求するため、組み込むことにしたとも記載。

・ACAはポールソンと協議を重ね、ポートフォリオの数を90に絞り込んだ(そのうち55個が当初ポールソン指定のものと重複)が、SECはこれらの選定にポールソンが深く関与していると主張。これにより、効率的にショートポジションを取れたとしてる(SECの資料だと、メールの遣り取り、会議などで相当ポールソンが関わってることがわかる)。一方、ZeroHedgeの記事ではLiesmanの言葉を借りて、ACAは55個しか当初の銘柄を選んでない。結果としてポールソンのショートポジションとはズレが生じ、思ったほど詐欺的なんじゃないかと書いてある。(Tyler Durdenは疑ってるが)

・ACAは、Abacusのスーパーシニア(9億ドル)に対するプロテクションを売却(50bp)。本来GSに向けられるものだが、このプロテクションは、ACA->ABNアムロ->GSのような形で迂回させてる。(著者注:カウンターパーティリスクのすり替えでみられる技)。アムロにも、GSは「ポートフォリオはACAが選んだ」と言ってる。ちなみに2007年末には、ACAが財政難に陥り、ACS->ABNアムロのCDSをアンワインドすることに。結局、アムロ->GSのCDSも2008年7月にアンワインド。

・ディールは2007年の4月にクローズ。ポールソンはGSに1500万ドルの証券化+販売費用を支払う。

・2007年10月には、83%のRMBSがダウングレード、2008年1月にはポートフォリオの99%がダウングレードする事態に。結果としてAbacus全体のロスは10億ドルを超える金額に。

投資家への説明:ピッチブック

・GSが投資家に説明する際には、ポートフォリオはACAが選んだ事になっており、ポールソンの名前は一切出なかった。加えて、ACAにも、ポールソンがエクイティを2億ドルほど買うと思わせてた(ここ争点)

・ピッチブックには、裏でポールソンがショートしてるはずが、GSがショートする形になっている(ピッチブック51ページ,Protection Buyer参照)のだが、GSの内部の人間は、IKBもACAも裏付け資産のリスクぐらい分かっており、誰かがCDOショートしてるのも知ってるはずだと答えている。

各参加者の損益

IKB: 第三者であるACAがポートフォリオの選定をしてるなら…と購入。構成はA-1(AAA,L+85) 5000万ドル、A-2(AAA,L+110) 1億ドル、結局買った直後に毀損、1億5000万ドルの損失。ポールソンが絡んでるなら買ってないと言ってる。

ACA:エクイティに投資(9億5100万ドル)して8億4000万ドルのロス。売ってたCDSが爆発して一気に資金難に。

ABNアムロ:本来CDSのポジションをミラーリングしただけで無リスクのはずが、ACAの財務状況悪化で片サイドのCDSが消滅。結果的にGSとのディールもアンワインド(解消)することになり、8億4000万のロス。

GS:投資した分9000万ドルの損失

結局Abacas全体で10億の損。ポールソンだけが独り勝ち、ストラクチャーの為の手数料1500万ドルをGSに払う代わりに10億ドル儲かったことになる。

GSの主張

1.今回の取引でGSも9000万ドルの損失を被っており、意図的に顧客に損をさせるものではない
2.CDOの世界で十分な投資経験があり、裏にショートポジションを取る者が居るのは分かってたはず
3.ACAがポートフォリオを選択している。(ポールソンはIKBと同様、意見を提供しただけ)
4.GSでは、ポールソンがエクイティのロングポジションを取るなどとは言っていない

感想・疑問点色々
・今回のSECのケース、シンセティックCDOの構造を問題視してるわけじゃない。何となく他の投資銀行への波及を避けてる気が。はなっからGS狙いだったのかも。

・SECとGSの意見の食い違いを見ると、1. (IKBに)ポールソンが銘柄選定に加わりながら、ショートするにも関わらず、ポールソン関与の事実を投資家に伝えてなかった 2.(ACAに)ポールソンがロングすると誤認させた、あたりのポイントが争点。

・個人的にゃポールソンの関与度からして、銘柄選定に深く関わったのは事実だけど、それが分かったらIKBは身を引いてたのか、ポールソンがショートするって分かってたらACAはコラテラルマネージャーの引受しなかったのか、等々のところが疑問符。

ウォールストリートの大捕物のように報道されてますが、複雑な商品の割には、今回の訴訟のポイントは実は単に言った言わないのところ、実にトラディショナルないざこざだったりします。しかしSECも、8百万ページも資料提出させといて、こんな案件しか挙げられなかったんだろうか…
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米国シカゴ郊外在住の金融系元IT屋によるブログ。金融業界での勤務経験を元に、世の中に流れるニッチなニュースを、できるだけ噛み砕いて解説する事をコンセプトとしたブログ。
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