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スペキュレーターは悪者?-最近のCDSワイドニング化について-

ギリシャの財政赤字が問題になり始めてから全体的にワイドニングしているCDSスプレッドですが、昨日はドイツの救済措置のニュースに反応して、ソブリンCDSが一気に50bpタイトニングしたりと、落ち着きの無い子供のようにうろちょろ動き回っています。

大抵こういう極端な動きになると、投機筋が不当にスプレッドを操作してると叩かれたり、CDSそのものが批判の的になる事が多いのですが、個人的にはCDSのマーケット要因で仕方ない側面もあると思っています。CDSが時価会計であるという特性上、スプレッドがボラタイルだとヘッジや中長期のリスクテイク目的では手を出せないため、どうしても投機のポジションが目立ってしまいますし、そもそも債券が動けばCDSも動かざるを得ないためです。

もう少し細かく説明するために、まずはCDSに関わるプレイヤーを整理してみます。


1. 投機(スペキュレーション)目的

短期の収益のために売ったり買ったりしてる人達です。

2. 裁定(アービトラージ)目的

社債とCDSでは流動性も参加者も違うので、同じイベントに対してもスプレッドの変動幅に差があります。ここに着目し、社債買い/CDS買いなどの組み合わせでクレジットリスクを相殺しながらスプレッドの差を取る人達です。他には、転換社債(CB)のクレジットリスクをCDSでヘッジして、株式オプションをのみを抜き出すCBアービトラージなんて取引にも使われています。

3. ヘッジ目的

銀行や事業会社で保有する債権の貸し倒れリスクを減らす、証券会社で引受けた債券の発行体リスクを軽減する、証券化商品のクレジットリスクを削減する場合などにCDSを買う人達です。ヘッジ目的なので、基本はヘッジ対象の資産がある限りCDSを売らずに持っています。他のケースでは、特定国に債権や事業が集中している場合に、カントリーリスクの削減のためのマクロヘッジとしてソブリンCDSを買うケースなどもあります。

4.投資(リスクテイク)目的

中長期的にクレジットリスクを取るためにCDSを売る人達です。直接事業会社のリスクを取る機会の少ない保険会社等がここに当てはまるかと。スプレッドを保険料とみなした倒産保険を引き受けるようなイメージです。他には、インデックスCDSを売って、上場会社のリスクを満遍無く取るというのもこれに当てはまります。


さて、話を相場に戻しましょう。マーケットが安定する為には、特に3,4の人達を増やす必要があるのですが、今の相場環境だと動けない事情があるのです。

 3.のヘッジ目的の場合、ヘッジ対象資産が発生主義会計だと、CDSの時価会計の影響をモロに被ることになります。例えばローンで100bpの収益を取って、CDSで10bp払ってクレジットリスクが軽減できれば良いのですが、ヘッジ資産の価値は変わらない一方でCDSは時価会計の商品なので、ヘッジしている期間中ずっと時価損益の変動リスクに晒されることになります。

例えばCDSスプレッドが拡大(ワイドニング)した場合、ヘッジ側のCDSの価値が上昇するので、時価損益がプラスになり当期収益に計上されます。ところが、ここからスプレッドが縮小(タイトニング)すれば、翌期の時価損益はマイナスになる。この期間毎の凸凹がアンコントローラブルなのが困るんですね。なので、スプレッドの変動が大きくなればなるほど、ヘッジサイドは手が出せなくなります。

加えて、ワイドニングした後のヘッジサイドはセータがネガティブ、つまりスプレッドが仮に一定であっても、期間が短くなるにつれデフォルトリスクが逓減し時価が0に近づいて行くので、満期までずっと時価損益がマイナスになります。途中で売ってしまえば収益を取れますが、それではヘッジにならないので当然売れません。

ヘッジ会計のように、収益認識をヘッジ対象資産と一致させられれば良いのですが、あんまり世界的に議論が進んで無いのが現状です。

他にも、クレジットリスクの代わりにカウンターパーティリスクが膨らむので、中々ヘッジに前向きになれないとか、ヘッジコストのほうが与信のスプレッドより高いとか、ヘッジするぐらいクレジットリスクが膨らむ案件が無いという事情もあるとは思いますが・・・(むしろこれらの事情のほうがデカイかもしれません)

 4.の投資目的の場合、CDSスプレッドが高くなれば収益機会は増えますが、変動幅がある程度落ち着かない事には中々大きいポジションが取れません。

という訳で、市場が荒れてる間は長期保有目的の3,4の人達が手が出せないので、尚更1.の投機筋の動きが目立ってしまう。そして、その動きに連れて2.のアービトラージャーが売買に走る。これが今のマーケットで起こっている事です。こういう状況に鑑みれば、一概に投機筋が全て悪いとは言えない、というのが私の結論です。

※ギリシャのソブリンマーケットに関する情報があんまり無いので、もし現状ご存知の方が居らっしゃったらご指摘下さい。
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