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CDSスプレッドが逆イールドになるのは何故か

最近世の中を騒がせるギリシャの件でTwitterを観察していると、CDSのカーブが逆イールド(inverted)になっているというコメントをちらほらTL上で見かけます。その流れに便乗して私もこんなツイートをしてます。
相変わらず思いっきりインバースしとりますなぁ。本来デフォルト確率は積み上がっていくものなので順イールドじゃないと変。じゃないと期間デフォルトマイナスになるから。まあ流動性が違うのが原因ですか。良くないパターンなのは確かRT @ActiveIndex: このパターンはギリシャ死亡か

書いた自分が言うのもアレですが、これだけだと何が言いたいのかさっぱりわからんので、もうちょっと細かく説明をしようと思ったのが今日のエントリーです。

本来、CDSのスプレッドカーブは順イールド、右肩上がりになります。企業(or国家)の倒産に賭けるというバクチ商品なので、その期間が長くなればなるほどリスクも高まる。なのでスプレッドも上昇するのが本来あるべき姿。期間の短いところが高く、長いところが低い形など、あまりお目に掛かるものではありません。金利のイールドなら足下金利が十分高い時には見かける光景なんですが…

我らが日本のソブリンCDSカーブを見てみましょう。確かに順イールドになっています。
jpy-cdsv.jpg


ところが、ギリシャの今日のクローズ時点のカーブを取ってくると、綺麗に右肩下がり、逆のイールドです。結構急な下がり方で、日本と違い目盛が10ではなく20bp単位になっている点に注目。
greece-cdsv.jpg

もう少し噛み砕いて説明しましょう。 

「今から1年後のCDSスプレッド > 5年後のスプレッド」

という、ギリシャで今起きている状況は、マーケットは1年後に倒産する確率より、5年後に倒産する確率を低く見積もっていることになります。でも、0-1年後より1-5年後のほうが安全なんて誰が予想できるんでしょう。右肩下がりだと、1-2年、2-3年…という期間毎のデフォルト確率は前の期よりマイナス、減少傾向になることを意味しています。本来、倒産確率というのは、期間が長ければ長いほど高まるはず。それが成り立たないことがそもそもマーケットに異変が起きていることの証です。

じゃあ何故こんな事態が起きているのか?実際のところはギリシャのCDSの実務担当に聞かなければ分からないのですが、外部から推測の範囲で考えれば以下の可能性が挙げられるかと。



1.市場のデフォルトリスクの織り込み方が短期/長期で違う

ギリシャはここ1年乗り切ればきっと心を入れ替えて財政再建に取り組んでくれてデフォルトリスクが減っていくさ、と市場が超ポジティブな織り込み方をしてる説。んなわけあるか!と思いがちですが、The Credit Default Swap Basis (Bloomberg Professional) にはCDSスプレッドの逆イールドの解説に真面目にこう書いてあります。
the belief that there is a higher probability of default risk right now rather than 5 years from now, because if the company survives the first few years, the risk of default is much lower later on. This gives rise to lower spreads.
もし企業が最初の数年をサバイブできれば、デフォルトリスクはその後縮小するため、今のデフォルトリスクが5年後より高いと思われている。なので短期のスプレッドが上昇傾向にある状態と。

2.流動性が短期/長期で異なる

ロイターの2年前の記事で、欧州物のCDSが逆イールドになった理由を書いてますが、これと同じ考え方です。
CDSマーケットは中心年限は5年で、それ以外の1年や10年といったところは取引が非常に薄いのが特徴です。なので、最近のギリシャの起債した12ヶ月物を買った人や、長い債券を持ってるが満期迄の期間が短くなった人がヘッジのためにCDSを使おうとすると、5年だと長すぎるので短いゾーンのプライスを取りに行くことになります。

が、価格を提示するディーラーもそんな年限のポジションを取ったところでヘッジするのも大変ですし、例え1年でもこんな価格変動の激しい、危なっかしいCDSのリスクを取ってgkbrしたくないです。

このため、ヘッジコスト(ポジションを取ってからヘッジするまでの価格変動コスト)をかなり載っけてクオートすることになる。実際にはやりたくないからぼったくりプライスを出すを行ったほうが正しいかもしれませんが…。こうなると取引があまり成立せず、ディーラーの提示したインディケーションが1年物の価格として認識されてしまうことになる。

逆に10年なんかは需要が無いので放置されて、プライスが動かない。これらの要因で右肩下がりのカーブが出来上がっているという考え方です。

3.市場が実払金額ベースで取引している

鷹鳩さんのブログの倒産前のGMのスプレッドSober LookのCITの状況で書かれているケースです。
「先生大変です。ギリシャちゃんが息してません」(AA略) 的な状態だと、マーケットでは確実に倒産を織り込み始めます。例えば10億ユーロのCDSだとすると、デフォルト時に受け取る債権の回収率が20%とすれば、CDSを売った側は8億ユーロ損することになるわけです。この8億ユーロを1年で回収するには8億/10億=80%(8,000bp)のスプレッドを取れば良くって、2年で回収するにはその半分(4,000bp)とれば良いと。なので、期間が長くなればどんどん見た目のスプレッドは小さくなるように見えます。

ところが、年4回、3ヶ月に1回の支払いで、何もスプレッドを取れないうちに潰れてしまったら元も子も無いので、こういう事態の時には先にある程度の金額を受け取るのがマーケットの敢行です。

例えばSober LookのCITのケースを借りれば、一年ものCDSのスプレッドは9,400bpだったのですが、内訳は6,600bpのアップフロント(前払)と500bpのスプレッドの組み合わせ。100ドルのCDSを買いたいとすると、先に66ドルを払っておいて、3ヶ月毎に1.25ドルを支払うことになる。半年で潰れたとすれば、債権の回収率が20%だとして、$80 -$66 -$1.25*2 =11.5ドルの儲けになるわけです。

このアップフロント部分は、CDSの期間が長ければ長い程高くなるので、例え逆イールドでも長いCDSを買ったほうが得という訳にはいかない仕組みになっています。


ギリシャ現状に鑑みれば、さすがに1ほど市場は楽観視してないし、3ほど極限状況でも無いと思うので、2が原因なんじゃないかと。ただ、インバートするということは、それだけ価格変動リスクが高いので、ポジションを手前で取りたくないという市場心理を表しており、ソブリン債にとってはある種の危機状態であるのは確かです。とはいえ、高々400bp、25%のデフォルト確率なので、危なくなったらEUが助けてくれる!という最後の切札を織り込んでる状態なんでしょうけどね。奇しくもECBが300億ユーロのバックアップ用のクレジットラインを組むと発表しましたしね。

が、何年か後にまたもや財政問題が浮上して、もうダメってとこまで行ったら3の状況になることもあり得るかもしれませんけどね…
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米国シカゴ郊外在住の金融系元IT屋によるブログ。金融業界での勤務経験を元に、世の中に流れるニッチなニュースを、できるだけ噛み砕いて解説する事をコンセプトとしたブログ。
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