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ドイツのコーポレート・ガバナンス

Twitterでコーポレート・ガバナンス絡みでドイツの話を見かけるようになったので、ドイツのコーポレートガバナンスの現状について筆を取ってみる事に。一月初旬、ドイツに出掛けてFU(Freie Uni)でGeorg Schreyögg教授にお話を伺ってた内容を纏めてみます。

なぜドイツか着目されるのかというと、他のアングロ-アメリカ系のコーポレート・ガバナンスとは違い、労働組合の力が非常に強いんですね。ガバナンスの違いを国際比較しようとすると、日本と併せてクローズアップされることも多く、ガバナンスマニア(?)にはたまりません。

Aufsichtsratと呼ばれる監査役会(Supervisory Board)が、Vorstandと呼ばれる取締役会(英:Executive board)の監督権限を持っています。そして、その監査役会への労組代表の参加が、Mitbestimmungsgesetz (共同決定法、とでも訳すのでしょうか、英:co-determination)というので規定され、従業員2,000人以上の会社については、監査役会の50%以上を占めるよう規定されています。労働者保護に重点を置いているんですね。

この監査役会・取締役会という切り分けは、2-tier systemとも呼ばれるもので、取締役会が監査役会に報告をし、監査役会が承認をします。日本の監査役も制度も2層だと言えばそうなのですが、監督権限だけの日本に比べると、ずっと監査役会の力が強いです。Models of Corporate Governanceによれば、取締役が日々の意思決定の権限を持つのに対し、監査役は取締役の選任権限、財務諸表の承認、大規模な資本支出、M&A及び配当への意思決定権限を持ちます。日本同様取締役による監査役の兼務は禁止されています。ちなみに、2層になってる国は他にもデンマーク、オランダ、フィンランド、スウェーデン、オーストリア等だそうで。

手許資料では、鉄鋼業・炭鉱では株主:労働者の割合が 50%:50%、一般的なドイツの大企業では50%:50%に加えて、監査会のchairman(代表監査役?)は票が割れたとき(deadlock)の為に、double voteという、最終決定権を持ちます。とはいえ、伝家の宝刀のようなもので、普通はその前にコンセンサスを取るのが普通らしいですが。中小企業ですと、この割合はもっと増えて、2/3を占めるようになります。

さて、こんだけ強力な労働者組合が監査役会に居れば、さぞかし取締役会はやり辛いだろう・・・という推測ができるのですが、実態は逆で、ただ単に取締役会の内容を批准するだけというところが多いそうで。ただ、M&Aとかの時には、結構従業員の反発を食らうそうなので、株主が納得すりゃいいというものではありません。

なぜ、労働者組合がこんな力を持つのか?を教授に聞いてみたのですが、「社会民主主義から派生した、何となく当たり前の考え方としてドイツに定着してるから」とのこと。そんなもんなんですね。とはいえ、国際化の波を受けて、ドイツでもアングロアメリカ的なガバナンス体制に変わろうとしているらしいです。

今、民主党がドイツ型の監査制度を導入しようとしてますが、ドイツのような歴史的な地盤が無い国で、どこまで機能するか議論はされてるんですかね。ドイツですら形骸化してるものを、御用組合の多い日本で導入してどこまで実効性あるのやらという気がします。

公開会社法、11年立法化 監査役に従業員、経済界は反発も(日経)

さて、話をドイツに戻しましょう。監査役会の選任ですが、ここで選ばれる監査役には創業者一族・銀行といった人達が入ってきます。歴史的に間接金融主導だったこともあり、銀行の占める割合が大きいんですね。日本のように銀行の5%ルール、持ち合い株制限が無いため、例えばドイツ銀行が12.5%もダイムラーの株を持ってたりします。なぜ間接金融が強いかというと、第二次大戦以降、銀行が経営権を担保に金を貸してたのが理由なんですね。確実なお財布でもあり、長期的展望を持った投資家でもあると考えられているため、安定株主として今でも重宝されています。その他、企業間の株の持ち合いもしたもんだから、もう大変。一般投資家のプレゼンスがかなり低くなり、意見が通らなくなっています。このごちゃごちゃした株主構成のせいで、会社は誰が動かしているか?が曖昧になっているのが現状で、ドイツではそれが研究テーマになる程だそうです。

教授の研究では、ドイツの大企業を4つに分け、それぞれ「オーナー会社」「大株主の管理する会社」「少数株主の持ち合い「独立した少数株主の会社」と分類したところ、およそ35%が株主の強い会社。64%が経営陣が強い会社という分類になったそうで。とはいえ、収益上はどちらが強かろうが特に差が無かったらしいのですが。

中々面白そうな話なので、各国のコーポレートガバナンスの違いについて継続調査中です。何かフィードバックできることがあればまたブログに書きます。
---------------
以下、追記です。

Georg教授から許可を貰ったので、お名前を書きました。

ついでに色々質問してみたので、記していきますね。

1.日本では、監査役は取締役会への出席義務があるが、ドイツではあるのか
 →無い
2.労組の代表が取締役になることはあるか
 →ある、が人事担当のマネージャーのみ
3.取締役会の承認権限はどこまで?
 →会社による。承認権限の範囲は取締役会で決める事ができる
4.前取締役が監査役になれるか
 →日本と一緒で一般的だったが、この慣習は変わりつつある。
5.監査役会のdouble vote
 →労組側には与えられない
6.日本では、労組の代表を監査役に含めるという議論が始まっているが、どう思う
 →いいのでは?
7.co-determinationは良いか悪いか。
 →コンセンサスベースの意思決定をするのに寄与しているので、悪い制度じゃない
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