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CDSは悪者なのか(1)

結構CDSに関してTwitterで呟いた事が増えてきたので、噛み砕いて説明するコーナーを作ろうということで第一弾。

カリフォルニア州のトレジャラー(財務担当)が、「CDSのプライスがおかしい。何で我々がタイ・クロアチア・ブルガリアと一緒なんだ!」と文句言ってた記事がFTに掲載されたのが4月1日。アメリカの金融機関のカリフォルニア州のCDSの取り扱いについて、報告を依頼したという内容です。エイプリルフールのネタだったらまだ良かったんですが、残念ながら事実です。

背景にあるのは、税制優遇がありアメリカ内で消化されるMuni bond(地方債)以外に、ビルドアメリカ債という債券を州政府として初めて海外向けに売り出すので、CDSプレミアムで価格操縦されるのを恐れているということです。この辺の財政事情に関しては、拙著アメリカ各州の財務問題もご参考にどうぞ。しかし、クロアチアとかブルガリアに失礼じゃないかと思うのは私だけでしょうか…

しかもこの債券を売り出すために、ムーディーズがmuni bond (地方債)の格付ルールを「1世紀」ぶりに緩める対応をしたんですね。コーポレートより厳格だったのをS&PやFitchのように同一のルールにするらしいですが、7万の格付に影響、最大3ノッチも格上げになります。

まあ、政府としては自分の手の届かないエリアで価格が動くのが気に入らないので、何らかの圧力を掛けるという話になるでしょうが、カリフォルニア州の話で言えば、州債とCDSはマーケットが全然違う訳です。CDSマーケットは商品の損益・ポジションをちゃんと管理できる金融機関である条件はあれど、どこの国の誰が買っても問題が無い。一方州債はプライスに関わらず買いがコンスタントに入る。その意味ではCDSのほうが正しい評価がされているような気がしてなりません。

このように、債券の価格統制のためにCDSの「魔女狩り」が起こってる訳です。CDS取り扱ってたら石でも投げられそうな雰囲気ですね本当…

サブプライムとはなんだったのかを振り返る資料

さて、ワチャゴナブログ久しぶりの更新です。

Moody'sの去年の各付レポートを読んだのですが、2008年のサブプライム近辺の数字を拾うには中々良い資料です。2009年の2月に書かれたものなので、2009年については実績よりも悲観的な予測がなされています。

◯デフォルトレートのピーク (P.2)
この表でポイントだと思うのは、世界恐慌の頃はピークの1年前で既に高い(8%)のデフォルト率があったのですが、そこからじわじわ14%まで上昇しています。2009年の実績値は出てないですが、2008年の後半から急激にデフォルト率が拡大傾向にあります。
デフォルト曲線

◯サブプライムの状況 (P.3)

ムーディーズ格付先のうち101社がデフォルトし、総額$281.2B($238.6Bの債券と$42.6Bのローン)。そのうち84件が北米で$226.2B。そのうちリーマンだけで$120.2B。デフォルト件数は911-ITバブル崩壊時の2000年-2001年には及ばないものの、デフォルト総額は過去30年間で最大の規模。8割がFIRE+銀行。非金融系での最大倒産はトリビューン社の$13B。

annualdefautcounts.jpg

FIREとは、Finance,Insurance and Real Estateの略語で、元々は92年のセンサスが由来だそうで。名付けた人に座布団一枚。本当にこのセクターが炎上するとは思わなかったんでしょうね。

◯倒産の動向(P.4)
投資不適格だと起債そのものが無理だったことと、倒産してもDIPファイナンスを受けられる可能性が少なくなったので、Distressed Exchanges(債務交換:デットエクイティスワップや債務リストラ等々)が増加。

◯投機格付デフォルトレートの時系列推移(P.5)
大恐慌の時の投機(投資不適格)格付の倒産率は16%台。2009年にかけて5.8%まで上昇中なんですね。ただ、思ったよりも少ないです。ちなみに大恐慌の時には20%-30%の失業率。今のアメリカの失業率は10%をちょっと下回る前後。時代背景も市場環境も違いますが、10%で落ち着いてるのは実は凄いことなのでは?と思ってしまいます。

specdef.jpg

◯格上げ-格下げ比率(Upgrade-Downgrade Ratio,P.6)
平均は0.8近辺で1.0を下回りますが、これは格付は上がりにくく下がりやすいという一般的傾向を表しているのでしょう。2004年から加熱し、2007年にピーク(2.0)2008年に急激に0.4付近まで落ちていることがわかります。別資料の情報ですが、ムーディーズの2009年第4四半期の数字は0.71、S&Pの第3四半期の数字は0.61だそうで、まだ平均の0.8以下です。
ugdgratio.jpg

◯回収率(P.7)
極端に悪くなってるのですが、金融セクター(というかリーマン)の影響。$120Bリーマンに至っては、たった回収率9%という有様。思いっきりレバレッジ利かせた状態で、投資適格から半年でダメになったので、債権者側もまったく保全できないままだったのが原因のようで。
本来secured(保全)されてるはずの債券及びローンの回収率が悪化するのは非常に良くない傾向で、融資する側もガチガチにコビナンツ(融資条項)で縛ることに。ただ、マーケットの状況改善で随分緩和してきてるようです。

◯2011年問題(P.13)
かなり気になる問題。2004年から2007年に掛けて発行された債券及びローンが、2011年に集中して満期を迎える。2009-2010年で$86B,2011年に$104B。かなり金額的に大きい。一時期見られたようなマーケットの流動性危機は無いものの、米経済が二番底に向かうような事になれば、結構痛い問題です。

償還スケジュール

サブプライム前後の格付別米国社債イールド

一時期2,000bpを超えるスプレッドとなった債券ですが、随分イールドが落ち着いてきました。バークレイズの米国社債インデックス採用銘柄と、トレジャリーインデックスのスプレッドです。リーマンショック以降、AAAの債券であっても400bpの差が開いてるんですね。今年の1月に向けて、急激にイールドが縮小しています。随分落ち着いてきました。

投資適格


投資不適格のほうは、スプレッドがえらいことになっています。BBで1,350bp、B格で1,859bp、CCCで2,800bp(!)を超えた数字となっています。CCCだけ全体的に異様が動きをしています。

投資不適格

PIIGSで過去取組んだデリバィブ・仕組債の内容について

PIIGSの各国のデリバティブ・仕組債・証券化の内容を書いた、トムソン・ロイターの記事を見つけたので、数字に関するところだけ訳してみました。見て思ったんですが、ギリシャのやってたスキームって、全部過去にイタリアで実績があるんですよね。投資銀行のカモにされてるとしか思えない・・・

ロイターのコメントを借りれば、それぞれの国の債務負担に影響するほど大きなディールは無いが、単年度のGDP対比の債務比率を操作するために使われた形跡があるそうで。ちなみに、証券化に関しては2002年6月に、スワップに関しては2008年3月にEU内でルールが厳格化されています。


ポルトガル

スワップ
大した量じゃない

証券化
2003年に110億ユーロのnon-performing tax and social security debts (Citi,18億ユーロ)

アイルランド
正式なコメントは拒否しているものの、関係筋はたいしたことないとの回答。そもそも債務がGDPの27%しかないため。

イタリア

スワップ
1997 2000億円の円債への通貨スワップで、アップフロントでキャッシュを受け取り、債務比率を下げている。
今はほぼ残高無しとの回答。
但し、市町村レベルでは取り組み実績有り:245億ユーロ→デリバで60-80億のロス。
ミラノ市では、DB,JPM,UBS,Depfaとの17億の市債に絡むデリバティブで3億のロス。

証券化
2005年以前に、政府保有の土地収入・州の年金事務局の収入、州の宝くじ収入の証券化。
2005年の段階でこれらの収入は398億ユーロ。273億ユーロは債務の償還、66億ユーロは赤字の埋め合わせに使用。
ただし、2008年にすべて終了。結果17億ユーロのコスト。

ギリシャ

スワップ

1. 23億ユーロ。2001年取組。クロスカレンシースワップ。2037年まで (GS,2億ユーロ)
2. 13億ユーロ。2005年取組。金利スワップ
3. 4.5億ユーロ。2006年取組。金利スワップ

仕組債
2億8千万ユーロ。年金にオーバープライスで買わせた事が問題となっている(JPM)

証券化
2000-2001年に、38億ユーロの証券化で4千万ユーロのフィーを支払

1. 3億6千万ユーロ:EUROCONTROL(欧州航空管制局)の2001年-2019年の空港使用税
2. 20億ユーロ:EUの経済援助資金(economic Structual Aid)
3. 7億ユーロ:州政府の運営しているLoans and Consignments Fundの収入
4. 6億ユーロ:宝くじ収入

2005年には、証券化で11億の収入を見込んでいたが、他国の批判もあり取りやめ

スペイン

スワップ、証券化ともに実績無し。最近まで債務が少なかったため


アメリカ各州の財務問題

さて、ワチャゴナブログ久々更新です。

Twitterではお伝えしていたFTの2/26(金)の記事です。


ギリシャの救済問題で欧州が揺れ動いてた今日この頃ですが、アメリカの財務状況もあまり芳しくなく、税収減から歳出削減を余儀なくされたり、州公務員の年金・医療保険の追加拠出分1兆ドルの工面に追われる状況となっています。

資金不足に悩むカリフォルニア州などはデフォルト懸念がまだ拭えていませんが、各州の財政状況は関係ないかのように地方債マーケットは安定的に推移しています。というのも、

.そもそも債務依存度はギリシャより断然低い
.州債は税免除のメリット享受があるため、買い手が安定的にいる
.州は単体で収支を合わせる必要があるので、問題があれば議員がそれを早期に指摘する(注:本当か?)
.州債そのものはロールオーバーするので、元金の仕払は問題ない

という理由があるからです。

(各州のGDP対比の債務残高/歳出対比の債務支払額)
米国各州の債務比率

カリフォルニア州でもGDP対比の債務残高が3.9%,歳出にしめる債務支払額の割合も4.2%と、ギリシャのGDP対比の債務比率が125%なのとは比べ物にならないぐらい小さいです。

代わりにヤバイのが徴税力の無い郡(County)・市の持つ債務。アラバマ州ジェファーソン市では、下水道関連の債務30億ドルが払えずデフォルト寸前だそうで。債務が多額に加え、デリバティブでの損失も大きいとか。

各州の抱える問題は、債務というより収支に起因するもので、景気悪化が早すぎて増税と歳出削除ではカバー出来無くなっているのが現状です。このため、各州は政府の景気対策の一環で補助を受けているのですが、歳出削減の一環として雇用まで削られる可能性も懸念されています。

一般財源保証債(General Obligation Debt)は、税収の裏付けがあるので安全で、税収減の場合には増税してでも払おうだろうと投資家は見てますが、景気悪化時にそれが可能なのかも疑問視されています。退職者年金と医療保険の財源確保も大きな問題で、現在1兆ドル~3兆ドルと予想されているのですが、法的・政治的な側面から削減するのは難しい状況です。これらは公的債務の中に含まれていません。



さて、連邦政府から財政援助は全ての州が受けているわけではなく、自力で債券を発行して歳入減を埋めた州もあり、その発行総額は300億ドルにのぼります。

例えばイリノイ州では、年金の拠出額をカバーするために今年35億ドルの債券を発行済。サブプライム危機の際は、タバコ補償金から宝くじ収入まで証券化しています。債券の発行そのものは悪いことではありませんが、財源と結びついてないと大きな問題となります。

州政府の財政難の為に発行されたビルド・アメリカ債も問題です。インフラ投資計画の財源として発行していた従来の地方債は、利子が非課税であり州の高額納税者を対象としていたのですが、ビルド・アメリカ債は利子が所得税の課税対象であり、新規投資家(海外含む)に販売することを目的としています。

景気対策(Stimulus Package)の一環で、連邦政府がこの債券に関する利払を補助していることもあり、調達コストの削減には繋がるのですが、債務超過の危険性、及び暗黙のうちに政府保証があるように思われる事が投資家から懸念されています。



記事の内容としてはあんまり目新しい内容も無く、所々突っ込みたくなるのですが、州別のGDP対比の数字が欲しかったのでブログにしてみました。どの州も税収のインフローが物凄い勢いで落ちているので、これ以上債務を増やすわけにはいかず、結構歳出削減に励んでいます。周囲でも州立大学で補助がごっそり無くなったという話を聞きますし、先月までの大雪でも、去年まではやってくれていた小道の除雪が無くなったりと、生活に直結するところもギリギリまで地味に削ってるようです。

しかし、意外とハワイってGDP対比の債務比率多くて7.5%もあるんですね。日本人観光客減って税収が減ったんでしょうかね?

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Author:Financial IT Engineer
米国シカゴ郊外在住の金融系元IT屋によるブログ。金融業界での勤務経験を元に、世の中に流れるニッチなニュースを、できるだけ噛み砕いて解説する事をコンセプトとしたブログ。
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